CHAPTER 01
より安全な構造へ
東日本大震災の経験を踏まえ、全国的に防災に関わる法整備・施設整備が進められている昨今。島根県美術館では、エントランスロビーの天井をより安全性の高い構造に改修しています。鉄板を用いた「吊り天井」から、軽量で柔らかく且つ頑丈な素材を使った「膜天井」へ移行。改修後は、入館した際に見える景色が大きく変わります。
CHAPTER 02
特殊な構造に合わせたプランニング
元の天井は直線的な平面ではなく、波のように曲線を描く形状。設計はもちろん、足場を組むための仮設計画もその複雑なフォルムに沿ってプランを立てる必要がありました。そこで今回はBIM(Building Information Modeling)を採用。コンピューター上に建築物の3Dモデルを作成し、ワークフローを合理化。設計や仮設計画、資材調達、施工管理などを一括して行っています。
CHAPTER 03
精密なデータをシンプルな形で共有
平面図から起こした3Dデータに実際の建物の点群データを反映し、特殊な形状の建物を3D空間に細部に至るまで再現。平面図の場合は僅かな高低差を複数の断面図に起こす必要がありますが、BIMでは一つのデータへの集約が可能に。管理者も施工者も正確な情報を視覚的に共有できるようになっています。画面に触れるだけで直感的に操作できるのも魅力。現場では協力会社の職長にタブレットを配布し、指示に利用しています。
CHAPTER 04
経年劣化した建物を、
デザインをそのままに修繕
建設から20年以上が経ち、外壁は経年劣化が進行しています。雨のたびに雨水が侵入する箇所も点在。防水処置や防火設備の設置、耐震工事などの長寿命化工事を行っています。外観は曲面で構成される部分が多いため、元の図面に現地での実測データを反映しなければならず、足場や仮囲いの計画も複雑さを極めます。
CHAPTER 05
収蔵品とともにある繊細な工事
館内では壁面や床材の張り替え・復旧、法令に沿った避難設備などの工事を進めています。休館中であっても館内には収蔵品があり、浮世絵や日本画など直射日光・高温多湿を避けなければいけない繊細な美術品も多数。収蔵庫や展示室の改修を行う際には美術品を移動し、動かせない大型の彫刻などは破損防止の処置を施します。人の動線にも配慮しながら工事を計画し、虫が侵入しないよう出入口には防虫の対策を施しています。